この「赤絵人物画花入」は、幕末から明治にかけての日本が世界とつながり始めた時代、その象徴ともいえるような美術品です。有田で製作されたこの花入は、鮮やかな赤を基調に、青や緑、金彩などが巧みにあしらわれた華やかな装飾が施されており、赤絵特有の繊細さと装飾性の高さが際立ちます。特に注目すべきは、花入の胴部にあしらわれた立体的な人物像で、平面的な絵付けにとどまらず、まるで彫刻のように人物が浮き出して見えるその表現には、高度な技術と芸術的感性が感じられます。 　このような立体的な人物装飾は、明治期の輸出陶磁の中でも比較的珍しく、肥碟山（ひちょうざん）窯の作風に非常に近いことから、当時の有田の窯元がどれほど西洋の嗜好に応えるために創意工夫を凝らしていたかがうかがえます。伝統的な日本の美意識、たとえば美人画や桜の花などのモチーフをもちいながらも、対称的な構図や色彩の華やかさには、どこか西洋美術との共鳴も感じられ、まさに異文化が融合した造形美です。 　さらにこの花入は、一度ヨーロッパに渡ったのちに日本に戻ってきた「里帰り品」であるという点も、単なる装飾品以上の意味をこの作品に与えています。遠く異国の地で愛され、長い時間を経て日本に戻ってきた背景には、日本美術が世界で高く評価されてきた歴史や、人々の美意識の橋渡しがあったことがうかがえます。 　このように、この赤絵人物画花入は、技術、芸術性、歴史性を兼ね備えた作品であり、それ自体が一つの物語を語るような、非常に魅力のある陶磁器です。美術品としてはもちろん、時代を超えて受け継がれる文化財としての価値も十分に備えています。 ★寸法★ 高さ35.5㎝ 胴径19.8㎝ 陶磁器の町、佐賀県伊万里市在住で古物商（第911100009525）を営んでおります「陶磁器ヨーソロー」と申します。 古伊万里、現代作家もの、個人で製作活動しているレアな窯元、有田焼伊万里焼の陶磁器を中心に出品しております。 未使用品に関しては陶磁器商社、骨董に関しては古物競りやコレクター依頼品でございますので、ご安心くださいませ。